2008年 05月 21日
紋紗の道行
春になると羽織やコートを着ずに帯付きで出掛けることになるが、「上着を着ない」ということが心許なく感じていた。
電車に乗る時に着物や帯が直接シートに当たるのも気になるし、人混みを歩く時はお太鼓を周りの人や物に引っかけてしまいそうで落ち着かない。
この時期は天気によって気温が大きく変わり、特に朝晩は肌寒いこともあるし、外は暑いのに移動の車内は冷房でキーンと冷えていることもある。
また、私の場合はこの時期に着たい着物が明るめの色のものばかりなので、袷の時期以上に汚れが気になってしまうし、帯結びがうまくいかなかったときに道中だけでも隠してくれる上着があったらありがたいという本音も…。
ショールを使えば手軽でいいのだが、なぜかすぐに肩から落ちてしまうので、荷物が多いときなどは却って邪魔に感じてしまう時もある。
「帯付きの季節に着られる上着が欲しいけど、まだまだ先の話かなあ」と思っていた昨年秋、百貨店で赤札になっていた紋紗のコート地に出会った。
いくつかの反物がある中で、一目で気に入ってしまったのが黒いシンプルなもの。
地味といえば地味なのだが、紋紗の陰影が綺麗でずっと見ていても飽きない。
シーズンオフでお仕立て代込みの赤札価格になっていたこともあり、即決してしまった。
羽織にするか道行にするか迷ったが、この時期の上着は何枚も買わないと思うので、どんなシーンにも着られる道行にしてみた。
初めての道行なので衿の形を迷う。
お店の方は千代田衿や被布衿なども薦めてくださったが飽きのこないものが欲しくて一番シンプルな道行衿を選んだ。
去年のうちに仕立て上がっていたのだが、今年の春先には着物を着る機会がなく、先週末の京都へのお出かけのときに初おろしとなった。
気温が上がりそうだったので着るかどうか迷ったが、一度着てみないと着心地がわからないのでとりあえず着て出掛けた。
(これが、あとで自分を助けてくれることになるとは…)
帯の模様がうっすらと透けて見える。
これなら、初夏の天気のいい日に着ても暑苦しく見えずに済むかしら。
この日着た塩沢のネコちゃん柄が透けて見えたら可愛いだろうな〜と思っていたのに、ぼんやりした柄だったので全然見えなかった。
軽くて着心地がとても良く、脱いで畳んでもしわにならないのも嬉しい。
京都までの電車が混んでいたので、「着てきて良かった〜」と気分が良くなる。
ただこの日の着物と草履が白だったせいか、電車の窓に映る自分を見て「不祝儀の席に出掛けるような雰囲気になっているのでは?」と気に掛かる。
そして電車を降りた時、なんともタイミングよく黒い上着を着たお坊さんとすれ違ってしまった。うわ〜、ほとんど同じ色使い。
白地の着物にこの道行を合わせる時は、せめて小物の色を明るくしようと心に誓う。
京都では素晴らしい展示会を拝見したあと、JR伊勢丹の呉服売り場に立ち寄る。
しばらく商品を見ていると、売り場の方が遠慮がちに声を掛けてくださった。
「あの〜、お着物のお尻の部分が少しほつれているようなのですが…
よろしければ応急処置をさせていただきましょうか?」
ひぇ〜〜〜。やっちゃったよ〜〜〜!
きっと展示会場で座ったり立ったりを繰り返しているうちに縫い目に負担をかけてしまったんだろう。
そういえば、会場で無造作に正座などしている時に、お尻にテンションが掛かっているなあという認識は確かにあった。
なんでその時に気づかなかったのか。いや、なんでそんな無造作な正座をしてしまったのか。ショック。
完全に縫い目が切れていたのは2cmほどで、さらに上下1cmずつ縫い目が緩んでしまったようだ。
買って2年目のお気に入りの着物を傷つけたショックと、自分の身のこなしの悪さへの自己嫌悪で、頭がいっぱいになる。
しかも外が暑くて道行を脱いでいたので、多くの人にほつれたお尻を見せながら歩いていたことになる。上りのエスカレータにも乗ったし。みっともないよぉ〜〜〜。
しかしここで道行を持っていたことを思い出し、お店の方の親切な応急処置の申し出をお断りして、慌てて道行を羽織る。
ショックを受けつつも「暑い中、道行を着てきて良かった」と思うと少し気が晴れた。
もちろん着物の縫い目がほつれた時のために上着を着ているわけじゃないが、何かの時の助けにはなるなあ、と思ったことだった。
さて、縫い目のほつれを直さなくては。
シーズン終わりに汗取りの手入れに出すまで、自力の補修でなんとか持ちこたえてくれますように…
電車に乗る時に着物や帯が直接シートに当たるのも気になるし、人混みを歩く時はお太鼓を周りの人や物に引っかけてしまいそうで落ち着かない。
この時期は天気によって気温が大きく変わり、特に朝晩は肌寒いこともあるし、外は暑いのに移動の車内は冷房でキーンと冷えていることもある。
また、私の場合はこの時期に着たい着物が明るめの色のものばかりなので、袷の時期以上に汚れが気になってしまうし、帯結びがうまくいかなかったときに道中だけでも隠してくれる上着があったらありがたいという本音も…。
ショールを使えば手軽でいいのだが、なぜかすぐに肩から落ちてしまうので、荷物が多いときなどは却って邪魔に感じてしまう時もある。
「帯付きの季節に着られる上着が欲しいけど、まだまだ先の話かなあ」と思っていた昨年秋、百貨店で赤札になっていた紋紗のコート地に出会った。
いくつかの反物がある中で、一目で気に入ってしまったのが黒いシンプルなもの。
地味といえば地味なのだが、紋紗の陰影が綺麗でずっと見ていても飽きない。
シーズンオフでお仕立て代込みの赤札価格になっていたこともあり、即決してしまった。
羽織にするか道行にするか迷ったが、この時期の上着は何枚も買わないと思うので、どんなシーンにも着られる道行にしてみた。
初めての道行なので衿の形を迷う。
お店の方は千代田衿や被布衿なども薦めてくださったが飽きのこないものが欲しくて一番シンプルな道行衿を選んだ。
去年のうちに仕立て上がっていたのだが、今年の春先には着物を着る機会がなく、先週末の京都へのお出かけのときに初おろしとなった。
気温が上がりそうだったので着るかどうか迷ったが、一度着てみないと着心地がわからないのでとりあえず着て出掛けた。
(これが、あとで自分を助けてくれることになるとは…)
帯の模様がうっすらと透けて見える。
これなら、初夏の天気のいい日に着ても暑苦しく見えずに済むかしら。
この日着た塩沢のネコちゃん柄が透けて見えたら可愛いだろうな〜と思っていたのに、ぼんやりした柄だったので全然見えなかった。
軽くて着心地がとても良く、脱いで畳んでもしわにならないのも嬉しい。
京都までの電車が混んでいたので、「着てきて良かった〜」と気分が良くなる。
ただこの日の着物と草履が白だったせいか、電車の窓に映る自分を見て「不祝儀の席に出掛けるような雰囲気になっているのでは?」と気に掛かる。
そして電車を降りた時、なんともタイミングよく黒い上着を着たお坊さんとすれ違ってしまった。うわ〜、ほとんど同じ色使い。
白地の着物にこの道行を合わせる時は、せめて小物の色を明るくしようと心に誓う。
京都では素晴らしい展示会を拝見したあと、JR伊勢丹の呉服売り場に立ち寄る。
しばらく商品を見ていると、売り場の方が遠慮がちに声を掛けてくださった。
「あの〜、お着物のお尻の部分が少しほつれているようなのですが…
よろしければ応急処置をさせていただきましょうか?」
ひぇ〜〜〜。やっちゃったよ〜〜〜!
きっと展示会場で座ったり立ったりを繰り返しているうちに縫い目に負担をかけてしまったんだろう。
そういえば、会場で無造作に正座などしている時に、お尻にテンションが掛かっているなあという認識は確かにあった。
なんでその時に気づかなかったのか。いや、なんでそんな無造作な正座をしてしまったのか。ショック。
完全に縫い目が切れていたのは2cmほどで、さらに上下1cmずつ縫い目が緩んでしまったようだ。
買って2年目のお気に入りの着物を傷つけたショックと、自分の身のこなしの悪さへの自己嫌悪で、頭がいっぱいになる。
しかも外が暑くて道行を脱いでいたので、多くの人にほつれたお尻を見せながら歩いていたことになる。上りのエスカレータにも乗ったし。みっともないよぉ〜〜〜。
しかしここで道行を持っていたことを思い出し、お店の方の親切な応急処置の申し出をお断りして、慌てて道行を羽織る。
ショックを受けつつも「暑い中、道行を着てきて良かった」と思うと少し気が晴れた。
もちろん着物の縫い目がほつれた時のために上着を着ているわけじゃないが、何かの時の助けにはなるなあ、と思ったことだった。
さて、縫い目のほつれを直さなくては。
シーズン終わりに汗取りの手入れに出すまで、自力の補修でなんとか持ちこたえてくれますように…
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amethyst
at 2008-05-21 22:15
x
引越しも終わってほっとしてやっとお着物でのおでかけができましたね。
塩澤の猫ちゃん柄↓わかってなかった。かわいい♪
そしてこの初夏の季節にやはり透ける感じか単衣の羽織ものが
欲しくなりますよね。わかる~
それと着物は全身で着るものだから、いつ何時
困ったところがほつれたりするかわからないんですね。
しかも目の届かない、後ろにというのがちょっとショックです。
道行もっておいてよかったですね。
「着る」ことばかりが念頭にいっていて、着ている間の
所作も大切なんですね。実体験をありがとうございます。
でもよい物を見にいけたし、次回また素敵な着姿見せてくださいね。
塩澤の猫ちゃん柄↓わかってなかった。かわいい♪
そしてこの初夏の季節にやはり透ける感じか単衣の羽織ものが
欲しくなりますよね。わかる~
それと着物は全身で着るものだから、いつ何時
困ったところがほつれたりするかわからないんですね。
しかも目の届かない、後ろにというのがちょっとショックです。
道行もっておいてよかったですね。
「着る」ことばかりが念頭にいっていて、着ている間の
所作も大切なんですね。実体験をありがとうございます。
でもよい物を見にいけたし、次回また素敵な着姿見せてくださいね。
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Medalog at 2008-05-22 10:13
amethystさんへ
この季節の羽織ものは、着物初心者なのに贅沢かしら?とも思ったんですが、今持っている着物を大切にするためには必要だと思って作ってしまいました。
冷え対策、塵よけはもちろん、パールトーン加工してあるのでちょっとした雨コート代わりにもしたいので、どんどん使うつもりです。
お尻のほつれは本当に恥ずかしかったです。自分ががさつな人間だということを周りに言いふらしているようなものですから…。
amethystさんは私のようながさつな立ち居振る舞いはなさらないから大丈夫ですよ!でも気を付けるに越したことはないですよね。私も、もう少しおしとやかな女性になれるように頑張ります。
この季節の羽織ものは、着物初心者なのに贅沢かしら?とも思ったんですが、今持っている着物を大切にするためには必要だと思って作ってしまいました。
冷え対策、塵よけはもちろん、パールトーン加工してあるのでちょっとした雨コート代わりにもしたいので、どんどん使うつもりです。
お尻のほつれは本当に恥ずかしかったです。自分ががさつな人間だということを周りに言いふらしているようなものですから…。
amethystさんは私のようながさつな立ち居振る舞いはなさらないから大丈夫ですよ!でも気を付けるに越したことはないですよね。私も、もう少しおしとやかな女性になれるように頑張ります。
by Medalog
| 2008-05-21 09:27
| きもの
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Comments(2)