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メダカと過ごす一日 medakalove.exblog.jp

大阪在住主婦の、のんびりメダカ飼育と着物を楽しむ日記です      


by Medalog

87歳に完敗した話

実家の母の服を買いに行った。
ここ数年は母が体調を崩したりコロナの流行が続いたりで、母が自分で洋服を買いに行く機会がめっきり減ったので、私が大阪で買って関東の実家に送ることが増えた。
実家と同じ関東(と言っても近くはない)に住む姉が、実家に通って両親の生活の手助けをしてくれているのだが、母の服に関しては私が少々ミシンを使えてズボンの丈などを母のサイズに詰めることができるので、私が担当しているのだ。

先日も母に頼まれて秋服を見繕いに出掛けた。
母が出掛ける先はほぼ病院なので、デパートで買うよりもスーパーの衣料品売り場ぐらいの商品がちょうどいい。
この日もスーパーに向かって歩いている途中で、商店街の小さな婦人洋品店を見つけた。
今までそのような店に入ったことはなかったのだが、店頭に吊るされた服が母にちょうど良さそうなのでフラッと入ってみた。
すると高齢の女性店員さんがすかさず寄ってきて接客を始めた。

母の状況や体型を話して一緒に服選びをした。
最初のうちは高齢者の服選びの注意点や高齢の母への気遣いなどいろいろ話してくれていたのだが、ふと気付くと話の内容が全てその女性の自分語りに変わっていた。

年齢は87歳。祖父は裕福で親も兄弟も高学歴で立派な職業だった。戦争によって環境が変わり自分は小さな用品店を経営することになったが子供たちも良い大学を出て立派な職業に就いている。孫もいる。夫に先立たれて今は一人でこの店を切り盛りしている。…という自慢話と苦労話が五月雨のように降ってきて、もはやこちらは相槌を返すのが精一杯の状況になっていた。

私が買い物途中であることもその女性にとっては関係なくなっているようで、私は手に買いたい服を持ったまま数十分も立ち尽くして話を聞いていた。
客の立場としては途中で話を遮って帰ることもできたのだが、その女性の表情を見ていると(ノーマスクの人だったので表情が良く見えた)同年代である実家の両親と重なってしまい、高齢者を労り敬う気持ちでもう少し話を聞いてあげるべきでは…と考えてしまって、そのまま話を聞くことにした。
次の客が来るか電話が鳴ってくれれば…と機会を窺いながら話を聞いていたが、結局1時間半ぐらい話を聞きっぱなし。笑
いつでも抜け出せるように途中で会計は済ませておいたので、待ちに待った新しい客が店頭に来た瞬間に「それじゃこの辺で!」と、無事に脱出成功した。



ところで、タイトルの「完敗」というのは、話を遮れずに押し切られたことではない。
(もちろんそれも負けてはいるのだが、自ら「この人の話を聞こう」と試合放棄した部分もあるので)

その87歳の女性、1時間半のおしゃべりの間、どこにも寄りかからずに姿勢良くピシッと立ったままだったのだ。
一方、私も立ちっぱなしで話を聞いていたが、時々足の左右に重心を入れ替えつつも途中で足が痺れてきた。爪先も徐々に痛くなり、いざ店を出るときには思うように足を動かせない状態。
気力と体力の面で完全に87歳の女性に負けていると思い知ったのが、1時間半を浪費したことよりも内心ショックだった。
私ももっといろいろ頑張らなきゃ、と思わせてくれたのは良かったと、素直に思う。



ただ、あのお店、母にちょうど良さそうな服が他にもあったのだけど、二度と行くことはないだろうなあ。

Commented by 神奈川絵美 at 2021-09-13 13:40 x
こんにちは! ひやーお疲れ様でした!
まさに、まさに「長寿の方はおしゃべり」を地で行く方でしたねー。
今もお店を切り盛りしているのですから、体力、気力、知力とも現役。
私もその場にいたら、Medalogさんと同じく、いかに早くその場を辞するか
頭の中がいっぱいになったと思いますが、こうして物語として読みますと
いやはや見習わなくては、と思います。

お母さまのお洋服、Medalogさんの忍耐?の戦利品!ですね。
Commented by Medalog at 2021-09-13 17:44
> 神奈川絵美さん
その店員さんがもっと若ければ私も「あーちょっと急いでいるので」と話を止めることができたと思いますが、親と同年代ということでちょっとこちらの気持ちが弱くなりましたね…
後半は愚痴が大半を占めていたので、私の1時間半が彼女のストレス発散に少しでも役立っていたら、それでいいかなと。
足を棒にしながら購入した服は、母が気に入ってくれたようで良かったです!
Commented by fuko346 at 2021-09-17 20:51
いやあ なんとも、、、
お偉いわあ、私はとてもお付き合いできないと思います。
でも 学ぶことは どこにでもあるものなのだ、と読ませて
もらって思いました。
Commented by Medalog at 2021-09-21 09:24
> fuko346さん
私も最初のうちは早々に切り上げようと思っていたのですが、なんというか老婦人の目の奥に悲しみとか悔しさとか色々なゆらめきを見てしまって実家の両親と重なり、そのまま放っておくのが忍びなくなってしまって…。

87歳に体力面で負けたのは衝撃でしたよ。
実は、これ以来ちょっとダイエットっぽいことしています笑
by Medalog | 2021-09-13 10:37 | 生活 | Comments(4)