大阪平成中村座 見物記

大阪城・西の丸庭園で開演中の「大阪平成中村座 十月大歌舞伎昼の部」を見た。
西の丸庭園にこの公演のために芝居小屋を建てるということで、その特別な雰囲気を味わってみたかったし、中村勘三郎・橋之助・獅童・勘太郎・七之助といった、お顔はよく知っているが歌舞伎はまだ一度も見たことのない役者さんが多数出演するのも魅力。


…以下、芝居の感想というより大阪平成中村座そのものの感想で、だらだらと長いです。すみません。


さっそくチケットを予約したのだが、正直なところ価格が高かった。
一番安い「桜席」が、大阪松竹座の2等席より高いのだ。
せっかくの機会だからできるだけ良い席をとるか、安い席で我慢するか、悩んだ挙げ句に一番安い桜席を選ぶ(笑)。
座席表を見ると、桜席は舞台の真横の2階席。どれほど演技が見辛いのかは会場に行ってみないとわからないが、普通の劇場にはない席なので、ある意味平成中村座を楽しむのには向いているかも?と思うことにする。

さて当日。着物で出掛けるのに絶好の場所と日和だったが、桜席の座席がどんな感じなのか見当がつかないこと、また天満橋駅から会場まではだらだらと上り坂が続くうえ20分ほど歩くので、身軽な洋服にしてしまった。
会場に着くと着物姿のお客さんもたくさんいらした。また桜席の座席はベンチに小さな座布団を敷いた感じで着物でも問題なく過ごせる座席だったので、洋服で来たことをちょっと後悔。



桜席の場所は舞台の真横。ということは幕の内側で、幕が開くまでは客席は見えず準備中の舞台が見えている。
セットを配置するスタッフさん、開幕前に拍子木を鳴らす人、唄方さんや三味線方さん(呼び方が違うかもしれません)に開演前の挨拶に回る役者さん、そして開幕直前にスタンバイする役者さんの表情までが間近に見られて、まさに舞台裏を覗き見する楽しさを存分に味わう。

そしていよいよ開幕。普通は幕が開くと舞台が見えてくるわけだが、桜席の場合は幕が開くと客席が見える。役者と同じ気分…というと言い過ぎだが、自分の立場がよくわからなくなる不思議な感覚がまた楽しい。

上演中は、真横から見ているので見辛い部分はもちろん多いのだが(全く見えない部分すらある)、なにしろ舞台に近いので迫力満点。役者さんのちょっとした表情の変化、衣装の美しさ、そして役者さんの顔から滴り落ちる汗までがはっきり見える。女形の様々な髪型を上から眺められるのも楽しい。
今まで歌舞伎は2階席の後ろのほうでしか見たことがなかったしこれからも多分そうなので、この迫力を味わえるのはもしかしたら一生に一度かもしれない。

そして一番の役得!
幕が下りた後、舞台上に残った役者さんが桜席の下を通って退場するのだが、拍手する私たち桜席の客に向かって微笑みながら軽く会釈してくださったりするのだ。確か獅童さん、勘太郎さん、そして橋之助さんが、慌ただしく退場なさりながらもチラッとこちらに目を向けて会釈してくれた。その距離わずか数メートルの近さ。
役柄の扮装と化粧をした状態で、作った表情ではない素の表情を生で見られるのはなかなか無いのではないだろうか?この時が一番興奮したかも(笑)



ただ、もちろんデメリットも多かった。
私の席は下手側の前から2列めだったので、花道はほぼ見えない。かろうじて役者の頭が見えるかどうかという感じだった。特に『封印切』の最後、勘三郎演じる忠兵衛の見せ場、罪を犯して逃げるのだが周りの人にはそれが言えず、明るい見送りの声に苦悩し、また追っ手におびえつつ去っていくというシーンが全く見えず、勘三郎がきっと素晴らしい演技をしたであろうと思うと残念だった。
ただ同じ桜席の下手側でも1列めの人はもっと見えていたのかもしれないし、上手側の桜席からはよく見えたはず。また桜席以外でも花道が見にくい席はあるので、「桜席だから」というデメリットではないのかも。

正面から見るときれいに横一列に並んでいる役者さんたちは、横から見ると手前の人しか見えないし、セットが邪魔になることも多い。
『熊谷陣屋』の名場面、熊谷が制札を手に大見得を切る場面では、熊谷自身が高々と揚げた右腕が邪魔になって横顔すら拝めなかったり…。
また大阪平成中村座ならではの、正面から見たらさぞかし素晴らしいであろう舞台演出(ネタバレ…舞台背景がバーンと開いて外の景色が見えちゃうのです。多分大阪城も)も桜席からではほとんど見えず、あまり楽しめなかった。



とまあいろいろあったが、とても楽しませていただいた一日だった。
桜席は「おすすめ」とは言い難いが、一興ではある。ライトが近いので暑く感じるかもしれないので、飲み物と調整しやすい服装は忘れずに…。

もちろん演目もとても素晴らしかった!
演じているというより登場人物そのものなのではないかと思わせる存在感の勘三郎さん、どの役もとにかく男前な(もちろん演技も)橋之助さん、鬼女を熱演した勘太郎さんが特に印象的だったが、扇雀さんにも目が釘付け…。
はぁ〜、行ってよかった。
11月公演、3,000円の立見席でもう一度行こうかな…。なんて。

※場内で履物を脱ぐのは知らなかった!靴下やストッキング、足袋もきれいなものを履いていきたい。また終演後は出口が込むし、自分の履物を持って客席へ行くので、ブーツは履かないほうがよさそう。


演目覚え書き(以下パンフレットより一部転載)

一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき) 
熊谷陣屋(くまがいじんや)
「一枝を伐らば、一指を剪るべし」という制札の言葉が物語全体を通底し、我が子の首を身替わりにした熊谷の悲劇が次第に明らかになる時代物の名作。人の世の儚さや無常感が心に迫る重厚な作品。
熊谷直実/中村橋之助
源 義経/中村獅童
藤の方/坂東新悟
堤 軍次/中村萬太郎
弥陀六/坂東彌十郎
相模/中村扇雀

河竹黙阿弥 作 新歌舞伎十八番の内 
紅葉狩 (もみじがり)
竹本、長唄、常磐津の掛け合いによる、華やかな舞踊劇の『紅葉狩』。高貴な姫が一変して荒々しい鬼女になるという変化が見どころ。
更科姫 実は戸隠山の鬼女/中村勘太郎
山神/中村鶴松
平 維茂/中村獅童

恋飛脚大和往来(こいびきゃくやまとおうらい) 
封印切(ふういんきり)
『封印切』の通称通り、忠兵衛が三百両の公金の封印を次々と切る場面が眼目
亀屋忠兵衛/中村勘三郎
丹波屋八右衛門/坂東彌十郎
傾城梅川/中村七之助
槌屋治右衛門/中村橋之助
井筒屋おえん/中村扇雀

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Commented by Pちゃん at 2010-10-23 20:51 x
再び、こんにちは!
平成中村座、行かれたのですね! 私も実は来月行きます。それも昼・夜連続・・・・。人生一度きりっ、と清水ジャンプしてしまいました~。大阪はまったく詳しくないので、現地に行き着くかかなり不安です。  お着物で行きたいけれど、きっと無理・・・。でも、今からどきどきわくわくしています。
Commented by Medalog at 2010-10-24 00:13
Pちゃんさんへ
わー、昼・夜連続とは豪勢ですね!
ぜひぜひ存分に楽しんでくださいませ。
(平成中村座にいらっしゃるということは、関西方面にお住まいなのでしょうか?)
当日はお着物でいらしたらとっても素敵ですが、昼・夜連続で観劇なさるとなると洋服も気楽でいいですし…。悩みますよね〜。
会場内は場所によって暑いところ・寒いところの差が激しかったように思いました。ライトが近かった桜席以外でも扇子を使っている方が特に2階に多かったですが、ある一部分だけやたらクーラーが効いていたり。調整できる服装をお勧めします。
当日まで楽しみですね!いい一日になりますように。
Commented by amethyst at 2010-10-24 10:55 x
十月歌舞伎楽しまれてよかったですね。
私も初めていった正月歌舞伎は下手の2?3?階席だったかな?
花道がほんの少ししか見えなくて、残念だったこと。
でもこちらに近くで演技する時は本当に
顔の演技すらみえてよかったこと、思い出しました。
一人の時は着物より洋服のほうが楽でよかったかもしれませんね。

形見の市松紬を仕立て直した記事も見せていただきました
市松柄は個性的ですけど、色が落ち着いているから
使いやすそうですね。
生地も大島のようで、胴抜きなら出番も秋に、春にと
出番は多いでしょうね。
菊の帯に臙脂の帯締めもぴったりです。(*^_^*)
Commented by Medalog at 2010-10-24 13:43
amethystさんへ
私は今まで花道がきれいに見える席で歌舞伎を見たことが一度もないんです。(今回が一番見づらかったですが…)
同じ2階席でも、やはり下手よりは上手のほうがいいのでしょうね。何回か観劇してみてようやく実感しました。一度くらいは、舞台も花道も間近に見える席で観劇してみたいなあ〜〜。
服装は、着物の方は羨ましかったですが、やはり洋服のほうが何かと楽ではありますね。とくに今回のような勝手のわからない場所では…。

市松紬はとても好みに仕立て上がって嬉しく思っています。胴抜きの着心地も楽しみ!
義母の着物は他にもたくさんあるのですが実際に着られるものはこれを含め数枚しかなさそうなので、永く大事に着ようと思います。
Commented by 風子 at 2010-10-25 20:18 x
中村座 いらしたのですね~~~♪

私は浅草 浅草寺の境内のときに行きました。
もう、だいぶ前のような気が、、、。

桜席、通の席ですよ~。
お芝居大好きの子が、一度は行ってみたいって
言ってました。
私もその席の一番前あたりが楽しめそうな気がします。

ところで浅草ではお大尽席ってのがあったのですが、
大阪でもあるのかな。
Commented by Medalog at 2010-10-25 21:56 x
風子さんへ
はい、いっちゃいました。楽しかったです〜。
浅草寺境内の歌舞伎小屋って、いかにも当時の雰囲気っぽくていいですね!大阪城公園というロケーションはなんだかちょっとおハイソな感じでした(笑)。
桜席は中村座ならではの席なので、見辛かったけど楽しめたので満足してます。
お友達もいつかチャンスがあったらいいですね。

お大尽席、いい所にどど〜んとありましたよ!立派な席でお膳も出ていたような?みんなに注目されていました。
さすがにあの席に座る機会は一生ないだろうなあ。
万が一お金があっても、コネがないと取れなさそう。
by Medalog | 2010-10-22 17:31 | 生活 | Comments(6)

大阪在住主婦の、のんびりメダカ飼育と着物を楽しむ日記です      


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